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大阪都構想は本当に必要なのか

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目次

大阪都構想の懸念点を振り返る

はじめに

大阪都構想の是非を問う住民投票が告示され、11月1日に投開票される

大阪都構想とは簡単に説明すると、大阪市を廃止し四つの特別区に分割再編するというものだ

大阪市の広い範囲の権限・予算 を大阪府に吸い上げて大阪府に一元化しようという狙いがある。

住民投票を主導してきた維新は都構想が実現すれば主に「二重行政の解消」「広域機能の一元化による大阪の成長促進」「住民サービスの充実」ができるという効果があるとしている。

本当にそうなのか。調べてみるとそうとも言えない実態が見えてきた。

莫大な経済効果は本当か?

大阪市作成の広報物には、年間1000億円のコストカットの達成とその分を投資に回すことで1.1兆円が特別区の設置による経済効果として期待できると記載されている。

これは大阪市より委託された学校法人嘉悦学園によって算出されたものだ。

この検証結果、実は実現可能性や学術的信憑性に欠けるとの指摘が絶えない。

安倍政権下で内閣参与を務めた京都大学大学院教授の藤井聡氏や立命館大学の松尾匡教授らによって2018年に発表されたレポートがある。

嘉悦学園の計算は「住民一人当たりの行政経費は、自治体の人口が小さすぎても大きすぎても高くなるが、それが最小となる自治体の人口サイズがある。」という先行研究を活かし、「分割して自治体の人口サイズを減らせば行政歳出額が減る。」との前提でされている。

しかしこの先行研究などでは大都市の行政出費が高くなる理由を「都市特有の出費があり、物価が高くかつ行政権限が広い」などとしており、これを踏まえると都構想を実現しても大阪が大都市である限り不可能だと言わざるを得ない。

単に自治体を小さいサイズに分割すれば歳出が削減されることはないのだ。

また同レポートではこれによって出た財政余力を投資資金に当てようとしていることから、嘉悦学園の報告書の「5000億円を社会資本整備に当てて10年で1兆円を超える経済効果を得られる。」という部分についても、投資効果が成り立つことを否定している。

これを見る限り「都構想で経済効果」という図式は成り立ちにくい

特別区の財政にも不安が

都構想では「憲法上の地方公共団体」である市が廃止されることで、市が持っていた巨大な自主財源と河川、公園、上水道や公共下水道の整備や運営、都市計画の決定などの権限は特別区ではなく府に譲り渡されることになっているわけだが、特別区の財政は大阪メトロの税収や配当金にという構図になっている。

その状況でも基本的に都構想の改革効果もあわさり特別区の収支は黒字とされてきたが、法定協議会などではこれはコロナ以前の景気での試算であり、コロナの打撃を受けた影響を反映すると「赤字」になると指摘されている。

財政上の不安が「ない」とは言えないのだ。

巨大な一部事務組合の発生と特別区の利害対立のリスク

都構想が実現すると大阪市が担ってきた行政サービスは、特別区の他に「一部事務組合」という特別地方公共団体が担うことになる。

「一部事務組合」とはもともと単独で処理するのは負担の大きい事業(例えば消防や水道事業やゴミ処理)を複数の自治体の協同で行うための組織で、大阪都構想では四つの特別区に割り切れなかった151の事業を対象にした巨大な一部事務組合が作られることが想定されている。

この一部事務組合、複数の自治体で運営や意思決定を行うため非効率になりやすいうえに、自治体間の規模や財政状況で対立が起きる可能性がある。

都構想の場合、住宅街メインの天王寺区と比較的財政に余裕のある北区の格差が指摘されている。一部事務組合だけではなく、財政調整の面でも一たび対立が起きれば深刻な業務停滞につながりかねない。

また一部事務組合には「一部事務組合議会」という各自治体議会からの代表者で構成される機関があるが数年で交代する上に年数回の開催のため、十分なチェック機能を持たせるが難しい。

二重行政の解消どころか下手をすれば現行より行政サービスが停滞したり、ムダが生まれる可能性がある。

気になる福祉サービスの行方

都構想の改革の中による財政試算では、スポーツセンター、老人福祉センター、子育てプラザといった施設の縮減が盛り込まれており、17億円を捻出するとしている。市民の健康生活を支える施設や高齢者や子育て世代の交流の場を減らすことは、市民生活にマイナスに働く。

特に子育てプラザは、在宅での子育てを行っている家庭や地域の子育て活動を支援するための施設であり、少子高齢化や共働き世帯へのサポートが叫ばれる中、拡充されるべき分野の施設ではないだろうか。

また介護保険事業が一部事務組合の業務に割り振られたことに対する批判も起きている。

介護保険事業という多様な事例と個別対応が必要とされるものが多い事業に関して議会が関与しづらくなるからだ。他の高齢者施策が府、特別区、一部事務組合、障がい者施策が特別区にバラバラの管轄になったこともあわせて柔軟な福祉サービスができなくなる懸念がある。

かつて維新政治には二重行政の解消として市民病院や保健所を縮減した結果、新型コロナ流行時に現場の多大な混乱を招いたという批判もある。

そのことも併せて考えて見ると福祉分野の事業を本来の目的ではなく、コストカットの対象として捉えている気がしてならない。

東京都の先行事例

すでに都区制度を敷いている東京都についても言及しておこう。

実は東京23区の区長で構成する特別区協議会は真逆の「都区制度の廃止」を提言している。

行政区に税源が少なく自治権を活かした行政サービスに限りがあり、財政調整のたびに特別区間でゴタゴタが起きているからだ。

さいごに

ここまで見てきて大阪都構想から皆さんには明日の大阪の明るい姿が見えただろうか。

残念ながらそこまでの説得力のあるようには私には思えない。

やはり住民の暮らしや自治を豊かにすることにはつながらないように思える。

いずれにせよ都構想がどうなるかは大阪だけではなく日本全体のグランドデザインを問題でもある。賛成・反対双方の主張を見比べて投票に行ってほしい。

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