コラム

日本を300の市に!『日本改造計画』27年前の壮大な夢②(By きづ)

日本を300の市に!『日本改造計画』27年前の壮大な夢②

1993年の初夏、ある一冊の本が書店に並びました。
2ヶ月後、政権交代が起きました。

ある一冊の本とは、小沢一郎氏の『日本改造計画』です。70万部を超え、政治家が書いた本としては異例の大ベストセラーとなりました。タイトル通り、小沢氏の政治改革の指針を書いた本ですが、発売後27年たった今でも、たびたび言及される凄い本です。
本来なら、今すぐブラウザを閉じて、図書館で借りて読んでもらったほうが良いのですが、図書館が遠い人のために、ごく簡単に紹介させていただきます。

官邸機能の強化

「政治改革の主要な課題の一つは、首相が名実ともにトップに立ち、政治をリードしていく体制をつくることである。首相周辺のスタッフを充実させ、あらゆる緊急課題を的確に判断し、同時に長期のビジョンに基づいて政策立案できる体制を整えなければならない。」(p.45)

小沢氏は、官邸機能の強化を訴えました。当時、官邸の側近スタッフは首相秘書官や官房長官、官房副長官などですが、小沢氏はさらなる拡充を提案します。

まず、官房長官を首席補佐官とします。
そして、その下に、政務補佐官、調整補佐官、企画補佐官、安保補佐官、広報補佐官を置きます。(政務補佐官と調整補佐官従来の官房副長官の役割を担うこととなります。)

一応、首席補佐官が、官邸のトップとして、官房長官のような職務を担うのですが、一つ大きな違いがあります。従来の官房長官の大切な仕事のひとつに、日常的な記者会見を行い政府のスポークスマン役をつとめることがあります。しかし、小沢氏の案では違います。政府の会見や発表等は広報補佐官に任せ、官房長官は官邸の調整に専念することになるのです。確かにアメリカのホワイトハウスでも、会見は首席補佐官の仕事ではなく、報道官の仕事です。
一方、野田内閣で官房長官をつとめた枝野幸男氏は「平時でも一日二回記者会見やるわけですよ。そこであらゆるテーマ、聞かれる可能性あるわけですよ。そうすると、記者会見ごとに、つまり、政治行政の全部についてレク受けるわけですよ。何聞かれても一応答えられるようにするわけです」とした上で、記者会見によって官房長官は日常的に行政の全体像の把握している部分があるとの見方を示しています。(マル激トーク・オン・ディマンド第846回)
官邸のトップが記者会見業務を担うべきか、もしくは報道官や広報官を別に設けるべきか、なかなか難しいところです。

リーダーシップなき首相と首相官邸を憂いたこの提案から30年近く立つわけですが、平成の間に官邸機能の強化は進みました。
今では批判的な文脈においても「官邸主導」という言葉が飛び交うようになり、小沢氏の理想は一定程度実現されたのではないでしょうか。

全国を三百の「市」に

小沢氏は、中央政府のむやみな権限強化は「権力に依存する無気力な国民を生み出し、日本国民の潜在的可能性まで潰してしまう」として、地方分権を訴えました。財源や人員や権限を、国から地方に移すことを提案しています。

なかでも印象的なのは、国から権限を委譲される自治体の再編成に関わる部分です。なぜなら、その提案は、日本人がながらく親しんできた「国・都道府県・市町村」という枠組み自体を大きく変えるものだからです。

「現行の市町村制に代えて、全国を三百ほどの自治体に分割する基礎自治体の構想を提唱したい。」(p.85)

つまり、現行の「国・都道府県・市町村」という構造をやめ、「国・市」にすると言うことです。

現状、都道府県は47個あります。そして、市町村は1700個あまりです。(2020年現在)
ちなみに、この本が出版された90年代には、市町村は、なんと3000個以上ありました!

それを全てガラガラポンでリセットして、300個の市に再編すると言うのだから、なかなかドラスティックな提案です。(実際、2020年現在、都道府県はまだちゃんとあります!)

都道府県が47個の今の形になったのは、今から130年前のことです。当時は、高速道路も、空港も、新幹線もありません。人口構成や産業構造もこの130年間で大きく変わりました。よって、当然このような再編の議論はありうる訳ですが、47都道府県の枠組みは甲子園やケンミンショーを観れば分かるように日本人の精神に深く馴染んでいるのも事実です。

今のところ、道州制や小沢氏提案の「300の市」が実現する気配はありません。

それでも、地方分権は、平成の政治における大きなテーマの一つであり続けました。平成の30年間を通じて、緩やかに地方分権は進んだと言えるのではないでしょうか。

感想

「政治改革」、「聖域なき構造改革」、「官から民へ」、「中央から地方へ」、「地方分権」、「地域主権」、「政治主導」、「官邸主導」、などなど。

こうして見ると、平成の30年間の政治の場で飛び交った多くの言葉のエッセンスは、この『日本改造計画』にあります。

30年前、何が目指されたのか、そして、何が実現したのか。

令和の今こそ、振り返るべき本だと思います。

小沢一郎(1993)『日本改造計画』 講談社
【ダイジェスト】枝野幸男氏:内閣官房長官の権力<https://youtu.be/_P0wAChGC3g>(2020年8月15日参照)

小沢一郎
小沢一郎『日本改造計画』27年前の壮大な夢①(By きづ)1993年の初夏、ある一冊の本が書店に並びました。2ヶ月後、政権交代が起きました。小沢一郎氏の著書『日本改造計画』を紹介します。70万部を超え、政治家が書いた本としては異例の大ベストセラーとなりました。タイトル通り、小沢氏の政治改革の指針を書いた本で、発売後27年たった今でもたびたび言及される程です。 ...

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きづ
98年奈良県生まれ。神戸大学在学中。奈良県在住なのに大阪の中高に通い、神戸の大学に通っています。ベッドタウン最高!

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