コラム

B L Mの時代の『13th-憲法修正第13条-』(By タカシ)

人種問題と映画

人種差別問題と僕たちの世代

2020年5月25日、アメリカ・ミネソタ州においてある黒人男性が現地警察に殺害されたことから「Black lives matter(BLM)」を訴える運動がアメリカ全土、ひいては世界中に広がっている。日本においても、デモが行われる他、S N S上にも様々な意見が飛び交っており、我々もその潮流の中にいると言える。

日頃から、日本人、特に我々日本の若者は、グローバルな問題に関心が低いと言われることが多いが、今回の問題に対しては、これまでになく関心が高いと感じる。その要因の一つとして、人種問題を扱った映像作品の存在は否定できないだろう。

さて、本日紹介する作品は僕たちが知るべき「現実」を教えてくれるものだ。
この作品に描かれていることは、我々にとってあまりに非現実的でありながら、当事者にとっては現実、常識である問題を扱っている、人種と社会の作品だ。

「13th-憲法修正第13条-」


(7月1日現在、YouTubeでも見ることが出来る)

2016年の9月に出されたこのドキュメンタリーは、Netflix作品『僕らを見る目』の監督、エヴァ・デュヴァーネイの作品である。
作品内では、マイノリティに対して犯罪者であるというイメージ付けを行い、差別を肯定してきた歴史を振り返り、南部奴隷解放後から現在まで続く、マイノリティーと刑務所への大量投獄体制をテーマとする。

大量投獄体制とは、何か。

アメリカの奴隷解放以前において、奴隷は綿花・タバコを生産する安価な労働力として使用されてきた。安価な労働力を使用して生産された綿花やタバコは、安価で販売することが出来、それによって、アメリカ社会は莫大な利益を生み出していた。

しかし、奴隷解放となってしまうと、安価な労働力を失うことになる。
そこで、アメリカ社会は「元奴隷」を様々な法律で取り締まり、刑務所での懲役によって労働力を確保することにシフトした。「犯罪者」を見つけるために、これまで微罪とされ、取り締まられなかったものや犯罪とは考えられないものも厳罰化した。そうして、多くの黒人を(無実の者も当然いた)大量に投獄した。
これが、大量投獄体制である。

そもそも、アメリカでは64年までジム・クロウ法が存在し、黒人は「合法的」に差別されている。確かに56年前それは撤廃されたが、社会そのものが変わったわけではない。人は変わらず、圧倒的な差別は残ったのだ。だから、それに不満を持つ多くの黒人が犯罪に手を染め、逮捕・投獄されたというのも自然の流れだろう。
黒人は粗暴で貧乏だから犯罪を犯す、などという間違った言説が流れることもあるが、人種問題は明らかに「社会」が生み出した歪みだ。

「現実」は続く?

ここまでは、歴史の教科書でも、よく教えられる内容であるが、
驚くべきことに、現在もこの体制は続いていることを映画は伝える。

アメリカには、2012年の時点で、200万人以上もの刑務所収容者がおり、全世界の約4の1の囚人がアメリカに集中しているのだ…。

KW解説

この先の内容は映画の本編に譲りたいと思うが、せっかくなので人種主義を扱う映画をもっと楽しむためのキーワードを2つ紹介する。

クラック
元々、コカインの歴史は、粉末のコカインが、比較的富裕の白人を中心に広まっていたことに始まる。
1980年代には、固形のコカインであるクラックが新たに発明され、黒人層を中心に広まっていった。
それと同じ時期に、純粋な反麻薬運動によって始まった麻薬の取締が始まる。
この運動は、固形のクラックを、粉末型のコカインに比べ、100倍以上の量刑になるまでに重罪化させてしまう。
結果的に、多くの黒人がクラックによって逮捕され、黒人コミュニティや家庭を崩壊させてしまうという事態が発生した。

刑務所産業複合体
刑務所における懲役刑とは、刑務所内において、仕事を行いながら生活するという刑である。賃金も発生するが、非常に低いこともあり、事実上、無いに等しい。
ここに目につけたのが、企業である。懲役囚を労働力と見なすことで、人件費を抑えることが可能であるのだ。
刑務所という社会的なシステムと企業との関係。
これが、刑務所産業複合体である。

ちなみに、弁護士ドラマとして日本でもリメイクされた原作の「SUITS」においても、刑務所と、企業の関係の関係性が触れられるエピソードが存在している。
こちらもぜひ、チェックしてもらいたい。

「最強の二人」

「最強の二人」は2011年にフランスで作られた、大富豪でありながら、過去の怪我により体が不自由な老人と、その介護人となった貧しい移民の若者の物語である。
全世界で大ヒットしている名作で、2013年には日本アカデミー賞を受賞している。
そしてこの作品は、2017年にブライアン・クランストンとケヴィン・ハートによって「人生の動かし方」としてリメイクされた。

リメイク版との相違点

リメイクを見る時に重要になってくるのが、原作との相違点である。
リメイク版において、貧しい黒人のデル・スコットは、刑務所において父親と出会い、「おかえり」と言われたことで、(父親は、刑務所=黒人という構図に諦めており、刑務所=家と考えている)、自分は息子に対して、自分達とは違う生活を歩ませたいと考える場面がある。

「黒人コミュニティ」の意味

この設定は、一見ありきたりなものに感じてしまうこともあるが、重要な意味があり、現代の大量投獄体制を知っていると、この設定が、特別なものではなく、黒人コミュニティーと家族という意味において、示唆的であること気が付く。
今回は一例を紹介したが、様々な作品において人種主義の問題は扱われているのでぜひ見て、考えてください。

我々は「現実」を知らなければ。

グローバル化と、インターネット社会化によって、世界は一体になりつつあるが、真に彼らとわかり合うためにはこうした問題への理解は不可欠かもしれない。
日本人の僕らはこうした「社会問題の常識」を、あまりにも知らない。
今回のBLM運動の中で、自分に出来ることは何かと考えた時、その答えの1つは「知ること」であると思った。
21世紀において、この問題は国外の問題ではなく、一人一人が取り組むべき問題なのである。
今回紹介した「13th-憲法修正第13条-」は正直、内容として難しいところもある。
しかし、人種問題を考えるための「第一歩」として映画を見るというアクションをおこしてみてもらいたいと考えます。

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ABOUT ME
タカシ
タカシ
湘南在住の学生ライター。99年生まれ。明治大学文学部生の21歳。西洋近代史専攻。 Z世代的視点で音楽、映画、小説といった様々な文化様式とU -25の関係をテーマとする。 文化とそこにある社会的なメッセージ、それを受けとる僕たちの世代の声。 そして、見落とされてしまいがちな小さき者の声をアンプリファーし社会に伝えて行く役割を果たしたいと思う。 扱って欲しいテーマや、ご意見などございましたら、@kuriya_freeの方にお寄せください。

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